お母さんは、僕が嫌いなんだ。
だから、僕をいつもいじめる。
兄さんと姉さんは可愛がられるのに、僕はいつもいじめられる。
父さんは、そんな僕を見てしらんぷり。
だから、僕の心はいじけている。
・・でも、本当はさみしがりやなんだ。
ある晩のこと。
お母さんが窓から外を見て言った。
「あら、ニワトリ小屋の扉が開いたままだわ。お兄ちゃん、閉めて来て。」
「やだよ。怖いもん。」
「それじゃお姉ちゃん、閉めてきて。」
「私だって嫌よ。」
「あらっ、そうだわ。にんじんを忘れていた。・・にんじん、あなた閉めてらっしゃい!」
「僕も怖いからやだよ。」
「何を言っているの!怖いですって!もうそんなに大きいのに。早く行きなさい!」と、お母さんは、僕に手を挙げた。
僕は泣く泣く、ニワトリ小屋の扉を閉めに行った。
勇気を出して閉めて帰ってきたら、みんなしらんぷりをしていた。
ある時、父さんが、鉄砲でキジを射止めて帰って来た。
キジはまだ生きていた。
お母さんが僕に言った。
「にんじん、キジを料理しなきゃなんないの。早くいつものように、キジの首を絞めてしまいなさい。」
「やっぱり僕、キジの首を絞めるのやだなぁ・・。」
「何言ってるの!それは男の仕事でしょ!」と、お母さんは怒鳴るので、僕は目をつぶってキジの首を絞めた。
キジは羽根をバタバタして必死で抵抗した。
そして、やっと動かなくなると、お母さんは僕を見てつぶやいた。
「まぁ、残酷な事。あなた、心の中では喜んでるんでしょう。・・ぞっとするわ。」と言った。 つづく
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