小泉八雲原作 『常識』より
昔々、
京都の愛宕山(あたごやま)のお寺に、大変まじめで、修行熱心なお坊さんが住んでいました。
ある日、このお坊さんのお寺に、一人の知り合いの猟師が、野菜やお米を持って訪ねて来ました。
和尚さんは、猟師に向って言いました。
「おうおぅ、いつもながら、すまんこっちゃのう。
・・おお、お前さんに話したい事があるのじゃ。
この前、お前さんが来てから、この寺で不思議なことが起るんじゃよ。
知っての通り、わしはこの寺で、熱心に修行に励んで居る。・・その功徳か?どうかは解らぬが、最近、毎晩、ゾウに乗った普賢菩薩(ふげんぼさつ)様が、お姿を御見せになるんじゃ。
わしの弟子の小僧も、毎晩見ておる。
お前も今日は泊まって、一度拝ませてもらってはいかがかな?」と。
猟師は、「それは有り難い!是非拝ませて下され。」と言いました。
がしかし、『果たして、信仰心の薄いこのわしにも、仏様のお姿が見えるのじゃろうか?』と思い、
お寺の小僧さんに、尋ねてみることにしました。
すると小僧さんは、「はいっ!このお経も読めぬ、修行も出来ておらぬこの私にも、有難いお姿が毎晩見えます!」と答えました。
それを聞いて、猟師は『ほぉ~ぉ』と言いながら、少し疑いの気持ちが沸きました。
その晩・・。つづく
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