土・日は、お寺に取って忙しい日である。
ご法事の仕事が、月参りの仕事にプラスされるからである。
それで、移動は時間短縮の為、車が多くなる。
今日も、移動に車を使った。
うちの寺の周りは、田んぼが多く、もう秋のトンボも居るのだが、やっかいな事に、まだ[やぶ蚊]がいる。
そして今日、(その厄介なことに)車に乗った時、中に[やぶ蚊]がいた。
ご存じの方も多いと思うが、これに刺されたら痒い。
又、僕の着ている[法衣]というのは、女の方のスカートと一緒で、(足首から上の太ももまでの)蚊の侵入が大いに可能なのである。
で、車の中で戦いが始まった。
でも、勝てないので、車を止めて、窓を全開にしてクーラーを最強にして、(一か所、刺されたが)なんとか追い出せた。
こんな時、名僧「良寛さまの逸話」を良く思い出す。
こんな話だ・・。
旅の途中、良寛さまは一軒の宿に泊まった。
あいにく満室だった為、良寛さまは、見知らぬ旅人と相部屋になった。
だから、食事も一緒にする。
たくさんのご馳走が出た。
中には、鳥や魚の料理も出た。
何でも、残さずパクパクと食べる良寛様。
それを見た相部屋の客が「坊主のくせに、生き物を平気で食べよる。何という、生臭坊主じゃ」と、言わぬでも目が語る。
その夜。布団の周りに[やぶ蚊]が大発生。
相部屋客は、蚊が気になって眠れない。
しかし良寛さまは、スヤスヤ(当然、蚊に刺されながらも)眠っている。
翌朝。
相部屋客は、良寛様に「昨日の夜、あの[やぶ蚊]でよく眠れましたね?」と尋ねると、良寛さまは一言。
「わしは、何でも食べるが、何にでも食べさせれるんじゃ」と・・。
悟った名僧は、言う事が違う。
こんな境地になりたいと思いながら、もう蚊は車の中に居ないだろうか?と気にしながら、迷僧の僕は、お参りに車を迷走させた。