住職のつぼやき[管理用]

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紙芝居:「円空上人と小さな仏さまたち」(その3)

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 ・・・こんな話が伝わっています。
 ある日のこと。
 円空さんは旅の途中、一件の農家に立ち寄りました。
(円空)「すまんが、水を一杯もらえんかのぉ・・。」
 と、円空さんがその家の戸を開けると、そこには床に臥せる女性がおり、その横に夫と子供らしき者が看病をしておりました。
(夫)「おぉっ、旅のお坊さんかね。水はそこにあるで、遠慮のぉ、飲んでけろ。」と、快く円空さんを招き入れてくれました。
(円空)「おや、そこで休んで居られるのは、坊やのお母さんかね?」と、円空さんが尋ねると、
(子供)「うん、そうだよ。母ちゃんは重い病気なんだ。・・でも、うちは貧乏なんで薬を買うお金が無いんだよ。」と、子供が答えました。
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(円空)「そうかい、そうかい。わしは銭は持っとらんので・・、それじゃあ、良いものを作ってやろう。」と言って、円空さんは、背中の背負子から、一本の木切れを取り出しました。
 そして、せっせせっせと、自分の鉈で、一体の仏さまをこしらえたのでした。そして、
(円空)「この仏さまを握り締めれば、お前さんの苦しみは解けてくるぞ。そして、念ずれば仏様が護って下さるからな。」と、母親に手渡したのでした。
(母)「まぁ、なんと優しいお顔をした仏様。・・私はこのような仏さまが欲しかったのです。」と、母親は涙ながらに喜びました。
(子供)「母ちゃん、良かったね。」と、子供も一緒に喜びました。
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 そして、この日の晩。
 母親は、「旅のお坊様、仏様を有難うございました。・・私はこれで、安らかに旅立てます。・・ナムブツ、ナムブツ。」と言って、静かに目を閉じました。
 父が泣きました。
 子が泣きました。
 そして、円空さんも泣きました。
 しかし、その亡くなった母の顔は、たいへん安らかな表情でありました。 つづく

紙芝居:「円空上人と小さな仏さまたち」(その2)

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 母を亡くし、一人ぼっちとなった円空さんは、やがて近くのお寺に預けられることになりました。
 そして、小坊主として修行に励むことになったのです。
 しかし、いつしか円空さんは、別れた母を思い出し、木切れを拾って来て、仏さまを彫り始めたのでした。
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 やがて、大人になった円空さんは、お寺を出て旅に出ます。
 美濃の国を離れ、関東、信越、東北を経て、北海道まで渡ります。
 そして、その土地土地で、仏像を彫り、お寺や神社、又は仏さまを求める人々に、どんどん寄進してゆきます。
 又、宿賃の変わりに仏像を彫って手渡したことも、多々あったそうです。
 ・・おそらく、仏像彫刻は、初めは母の供養の為であったのでしょう。
 しかし、いつしか円空さんの仏像製作は、貧しく、悩み苦しむ人々の為の〔心の安らぎ〕を目的としたものへと、変わっていったのでした。 つづく 

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