老人ホームでの『法話会』の後、たまに「・・ところで、今日の話について、何か質問はありませんか?」と聞く場合がある。(時間が余ったときによく使う手だ)
今日も、時間が余ったので、そんな事を言った。
すると、前列の女性が「あの~、ところで〔一休さん〕って、(歴史上)ホンマに居た人物なのですか?」と聞かれた。
今日は、『一休さん』という紙芝居とお話(エピソード)をしたからそんな質問が出たのだ。
僕は「はい、歴史上実在の人物です。ほんまに居てはったお方ですよ。」と答えた。
するとその女性は、「では、先ほど言っておられた『一休寺(酬恩庵)』というお寺はどこにあるのですか?」と続けられた。
僕は「京都の〔京田辺〕というところにあります。・・今の同志社大学の近くですね。」と、続けて答えた。
するとその女性は、「あぁ、同志社大学ですか。解りました、ありがとう。」とおっしゃられた。
僕は「そうなんですよ。・・テレビアニメで有名に成り過ぎて、とんちの〔一休さん〕って、架空の人物やと思って居られる方も多いでしょうねぇ。」と言って、しばらく一休さんのとんち小話(「このはし渡るべからず」の話)をした。
すると、先ほどの女性が・・、「ところで、一休さんってホンマに居た人物ですか?」と、又来た。
僕は「はい、実在の人物です。京都の京田辺というところにある〔一休寺〕というところで、87才で往生されました。」と答えた。
すると「その〔一休寺〕というお寺は、どの辺りにあるのですか?」と、同じ質問をされるので、
さりげなく僕は、「はい、今の同志社大学の近くにあります」と答えた。
横に座っておられる男性が、僕の方を見て「ニャッ」と笑われた。(ど壷にはまったな。・・さぁ、どうする?という顔だ)
しかし、僕は真面目な顔で、「テレビアニメで有名に成り過ぎて、一休さんは架空の人物やと思い込んでおられる方が多いのですね。それでは、先ほどとは違う有名な一休さんのとんち小話を一つ・・」と言って、(「《し=死》という有り難い文字の話」)をした。
すると先ほどの女性が「・・ところで、一休さんってホンマに居た人物ですか?」と質問された。
僕はちらっと目で、後ろに座っている職員さんに『どっかで話を割ってね』と訴えた後、「はい、実在の人物です。室町時代居られたお坊さんです。京都の京田辺という所の〔一休寺〕というお寺で87才でお亡くなりになりました。・・それは、今の同志社大学の近くです。」と答えた。
その女性は、「へぇ~、そやったんですか。ありがとう」と言われた。
その時、後ろの女性が「同じことばっかり言うて・・」と少し大きな声で云われた。
そう言われた初めの質問女性は、その言葉に『カチンッ』と来たのか、後ろを振り向き「うるさい!静かに聞いてなさい!今、有難いお話して下さってるねんから。」と怒られた。
その勢いに圧倒されたか、後ろの女性は静かになった。
そして初めの女性は僕に言われた、「あの、一休さんってホンマに居てはった人ですか?」と・・。
結局この日、最後の最後まで、この女性の頭にある『一休さん架空の人物説』を打破できなかったのは誠に残念なことであった。 施設でよくある法話会の一節でした。 以上