そして或る日、一方の頭はわざと〔毒の実〕を見つけて言いました。
「おい君っ、あそこに美味しそうな果物の実があるぞ!僕も食べたいけど、いつも僕が先に食べるので、今日は君が先にお食べよ」と・・。
するともう片方の頭が、
「そうかい、悪いねえ。じゃあ、先に戴くよ」と言って・・、
パクッと、毒の実を食べました。
「あぁっ、美味しい!」
・・しかし、しばらくすると、
「あぁっ~~、苦しいー!喉がヒリヒリするー」と言って、泡を吹き始めました。
それを見た片方の頭が、
「君っ、どうしたんだい!?」と聞くと、
「・・いけない。どうやら僕は〔毒の実〕を食べたようだ。だんだんと目が霞んできたよ。・・・でも、良かったよ」と言ったので、
「えっ、なぜ?」と、聞き直しました。
毒の実を食べた方の頭は言いました。
「いつも君とは喧嘩ばかりして来た。 僕が『東へゆく』と言うと、君は『西にゆく』と言う。 僕が『そろそろ休もう』と言うと、君は『いや、もうちょっと飛ぼう』と言う。・・が、よく考えてみれば、いつも君の判断の方が正しかった。君には毎度助けられたよ。・・僕が居なくなれば、これから君はずっと正しい道を選べるよ。だから、これで良かったのさ・・。じゃあ君、いろいろとありがとう。さようなら・・」と言って、その頭はもう動かなくなりました。
それを聞いて、もう片方の頭はそれはもうびっくりして、
「あぁっ、なんて事を僕はしてしまったんだー!!」と叫びました。
しかし・・、 つづく
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