住職のつぼやき[管理用]

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みんな泣いた話

 今日の〔法事〕の席でのこと。
 読経と読経の合間の休憩時間に、ご主人がしみじみとおっしゃった。
 「今日は父親の〔法事〕ですけど、先に亡くなった母親と弟の事を思い出してしまいました」と。
 「なぜですか?」と、僕が聞くと、ご主人は「今から60年ほど前のはなしです。」と続けられ・・。
 「私には、23歳で病気で亡くなった弟がおりまして・・。はい、もともと体は弱かったんです。
 その弟が小学校2年の時です。歯が痛いと言いまして、歯医者に行っても直りません。それで、大きな病院で診てもらうと、歯茎の中が腐ってたみたいで、結局、三度、大手術することになりました。今みたいに、よく効く麻酔が無くて、弟にとっては病院に行くのが苦痛で、その日になると、外の竹藪の中に逃げよるんです。
 母親は、当時小学校5年の私に、そんな弟を『摑まえて来い』と言うので、私は可哀想やけど、摑まえると弟が『いやや!』と泣き叫ぶんです。 私もつらいから、一緒に泣きながら母親の所につれて行くと、母親も泣いてて、私等二人を『ギュっ』と抱きしめてくれたんです。・・そして皆で泣きながら、バスに乗って病院に行きました。
 貧乏やったから、父親も治療費を工面するのに、頭を下げ回って借金して、夜に泣いてました。・・そう、みんな泣いてばっかりでした。・・こんな(ひ孫が居る)年寄りになった今も、はっきりと、その時の事を覚えてますねん。母親の感触も。不思議なもんでんなぁ・・」と目に涙を一杯ためて、おっしゃられた。それを隣で聞いていた奥さんも泣いておられた。・・又、その姿を見た僕も貰い泣きをしてしまった。 そう、今日は読経中にみんなで泣いていたのです。
・・みんな泣いた話でした。
 

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