住職のつぼやき[管理用]

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喫茶店を拝むOさん

 先ほど、「特養老人ホーム 甍(いらか)」さんに行って来た。
 そう、今日は月例〔講話クラブ〕の日なのだ。
 僕の車が「甍」の駐車場に入った時、ひとり車椅子のOさん(女性)が、玄関からどこかへ出て行かれる所に、出くわした。
 『・・どこへ行かれるのだろうか?』と、じっと見ていると、施設横の〔喫茶店〕に向かっているようで、『コーヒーでも飲みに行かれるのか?』と思って見ていると、突然、まだ閉まっていた喫茶店の玄関前で止まると、『パンッ、パンッ』と手を打ち、ゴニョゴニョと何か、声を出して拝み始められたではないか。
 『喫茶店を、神社かお寺か何かと、勘違いされて拝んではるんや』と、僕は車から降りて、Oさんの所へ向かった。
 そして、「Oさん、何を拝んではるのですか?」と、後ろから聞くと、驚かれ、こっちを向いて一言。「・・あぁっ、御住職。私、今日も『早く(あの世から)お迎えが来て欲しいのです』と、拝んでおりました」と言われた。
 「そうですか。Oさん、今から〔講話クラブ〕が始まりますよ。
 取り合えず、一緒に中でお話しませんか?」と言うと、「はい、わかりました」と言われ、玄関まで一緒に向かったのだが、玄関前で、突然Oさんは「御住職、私は、まだやる事がありますので、ここからは別行動でお願いします」と言って、今度は駐車場の方に向かって行ってしまわれた。
 ちょっと(迷子になってしまわれないか、車にぶつからないかと)心配になって見ていたら、ぐるっと駐車場を一周されると、こちらに帰って来られた。
 「用事は終りましたか?」と聞くと、「はいっ」と良い返事で、今度はご一緒に中に入った。
 僕は、受付の介護職員さんに「Oさんの事、わかってはりますよね?」と聞くと、「はい、見てます。これは、Oさんの日課ですから。」と答えが帰って来た。
 ・・そうなんや、喫茶店を、『礼拝所』として、毎日拝まれるのは、Oさんの日課なんや。・・これは尊重せなあかんなぁ・・と思い(喫茶店の意向は無視するとして、)「今度、喫茶店の玄関前に、『賽銭箱』の設置と、『いい日、旅立ち』と書かれた昔のJRの京都寺院の仏像のポスターでも、貼らしてもらうというのはどうでしょうか?」と、僕は無責任に提案したら、「それも良いですねぇ、頼んでみましょか」と返された。
 ・・まぁ、それは冗談として、マジで、施設の庭に(外で拝める)何か『お地蔵さん』の石像のようなモノを、持ってこようかと真剣に考えたのであった。

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