『悲劇』は嫌いだ!・・と思いながら、9年前に、紙芝居『王舎城の悲劇』を作った。
これは(仏教の中では)あまりにも有名な話なので、気軽にハッピーエンドに変えるわけにいかなかった。
・・が、作りながら、「これはいつかきっと、この『裏』紙芝居を作って、ハッピーエンドにしてやる!」と、(いつもの)僕の天邪鬼な気持ちは、ムクムクと起こっていた。
それで、以前に作った、未完ではあるが、紙芝居『王舎城の喜劇!』のさわりの部分だけを今回は紹介してみたい。(しょうもない話なので、大変申し訳ないが・・)
『王舎城の喜劇!』
王舎城の悲劇から、2500年経った日本のお話・・。
舞台は、とある『有名私立・仏教系小学校』。
今日はその小学校の入学式である。
式も終わり、午後からは、新入生と保護者達を歓迎する為の『仏教青年会(若手僧侶の会)』主催による『王舎城の悲劇』のお芝居が行われようとしていた。
開演三十分前、会場は期待でざわめいていた。・・が、しかし、その舞台裏では、とんでもないドタバタ劇が起こっていたのだった。
それは、日頃より学校運営を心良く思っていなかったPTA会長が、「子供が親を幽閉し、殺すというのは、時節がらどうかと思う。・・その場面を変えてもらえないか」と急遽、話に横槍を出したからであった。
「これは史実ですから・・」と必死で抵抗する校長であったが、それを聞いた仏教婦人会の会長が、「私も、イダイケ夫人の裸に蜂蜜を塗って、王に舐めさせるシーンは教育上良くないのでカットすべきだ」と同調し始めた。
そして、僧侶の校長先生はついに逆切れになり、「そっちがそう言うなら、悪役ダイバダッタ僧侶も、善い僧として登場させてもらうぞ!」と、険悪な雰囲気になり、一瞬即発の危機となる。
戸惑う、俳優役の若手僧侶達と仲裁役の演出家の苦悩。自分勝手でわがままな教育者と、後援会との妥協と死闘。
開演したものの、妥協したがゆえに、史実がどんどん変わり、「悲劇」がいつしか「喜劇」へと変わってゆき、誰も死なない、生まれ代わりもない、それでもアジャセが登場する、全員が善人の超ハッピーな大団円へとストーりーは展開していく。
はたして、この「悲劇」はいったいどうなってしまうのか?
いつか、この紙芝居を発表したいと思います。(しない方が良いだろうか?・・・(笑い))