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筋ジストロフィー青年との会話記録 その7

 このブログに書いている《記録》は編集したもので、本当はもっと長い。
 しかも、このタイトルが《青年〔N君〕との会話記録》になっている為、《カット》しているが、実は、N君だけではなく、もう一人〔Sさん〕という、同じ病気を持つおばさんとも仲良くなって毎回、N君との会話が終ったら、Sさんのお部屋にお邪魔してお喋りしている。そして、その会話を記録している。
 年頃の男の子を持つ女性〔Sさん〕の闘病生活とその苦悩も壮絶なものなのだが、テーマから反れてしまう為、やはり書かないことにする。・・いつか又、ひょっとすると発表するかもしれない、・・としておこう。
 
平成9年3月13日の記録
 2月は忙しくて病院へは行けなかった。
 今日のN君は一生懸命に『日本史』の《坂本竜馬》のことについて(彼は歴史が好きなのだ)喋ってくれるのだが、唾液が飲み込め無い為、バキュームで唾液を吸いながらの会話となり、なかなか話が進まなかった。
 今日は僕が、バキュームを口に入れる役をしたし、いつもなら看護師さんに、「頭を右に向けて」とか「手を上にして」とか頼むのだが、今日はそれを僕に頼んだ。微妙な位置の変化、移動は難しかったが、僕に頼んでくれたことは凄くうれしかった。
つづく


 

筋ジストロフィー青年との会話記録 その6

 〔病気よ、お前のおかげで わからない何かを 手に入れることができたよ・・〕 これは(28才で亡くなった)N君の『詩』の一つである。

平成8年10月14日の記録
 N君の体調が悪く、面会ができないと聞いていたのだが、O先生から「彼が是非、僕に会いたいと言っている。何か話したいことがあるらしい」と連絡を受け、T病院に向かう。
 彼はまだ個室にいる。・・が、顔色はだいぶ良いみたい。
 僕を見るなり「あっ」と喜んでくれた。・・が、「何か話したいことがあるの?」と聞いたら、「忘れてしまった」ということで、がっかり。
 それより、(彼が欠席した)先々月の『詩の朗読会』の様子を聞きたがっていたので、「みんな、君の詩に感動してたみたいやったで」と言ったら、行けなかった事を本当に残念がっていた。
 「それより、今日は僕の作った『月の神様になったうさぎ』という『紙芝居』を持って来たんやで。見てくれるか?」と言ったら、
「物語の好きな僕の後輩が大部屋に居るから、一緒に見ても良いですか?」と聞いてきたので、OKして、その(小1ぐらいの)後輩を部屋に呼んで来て、一緒に見てもらった。
 『紙芝居』終了後、その後輩の子は「僕も(うさぎのような)神様になるねん。神様になるねん」と繰り返し感想を言ってくれた。
 N君は「悲しい話やけど、優しい気持ちになれた。・・宮本さん、今度『宮沢賢治』の生涯の紙芝居を作って、ここで見せてくれませんか?」と言った。
 「わかった。いつかな・・」と言って今日は別れた。
 
平成9年1月15日の記録
 今年初めての訪問。N君は6人部屋に移っていた。
 場所は扉側に変わっていたが、前にここに居た小1の子はどうなったのだろう?・・聞けなかった。
 N君の顔色は良いようだ。
 お母さんもしばらくすると来られて、「Mっちゃん、ジュース飲むか?」と言って、ベットの上にぶら下っているガラス瓶に缶ジュースを入れ、チューブで彼の口に流し込み、味を楽しんだ後、もう一本のバキュームのチューブで、吸い取っていった。(もう、喉の器官が塞がっていて飲めないのだ)これは見た者しか解らぬ壮絶な光景だ。彼はこうして、喉の渇きを潤すのだ。
 「N君、食べることができるなら、今何が食べたい?」と聞いたら、「ケンタッキー・フライドチキン」と言った。
 昔、よくお母さんに買ってきてもらって食べたらしい。
 そういえば、彼は料理番組が好きで、よくテレビでそんな番組を見ているなぁ・・。つづく