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紙芝居:『すべてのものは仏さま』 (仏教もの22)

 紙芝居:『すべてのものは仏さま』 《シュリ・ラーマ・クリシュナの説話より》
 
 昔むかしのインドのお話。
 森の中に一人の偉~いお坊さまが居られました。
 そのお坊さまにはたくさんのお弟子さんが居られ、毎日熱心にお説教をされていました。
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 ある日、そのお坊さまはお弟子さん達に言われました。
「お前たち、よく聴きなさい。この世のすべてのものは仏さまが〔変身〕されたものなのだよ。だから、犬でもトラでも狼でも、すべてのものは仏さまの仮の姿なのじゃ。お前たちは、すべての生き物を仏さまだと思って尊ばねばいけないよ。それが修行じゃ。」と。
 その教えを聴いたひとりの若いお坊さんが、・・次の日、町に托鉢に出ました。
 そのお坊さんは「お師匠さまは、すべての生き物は仏さまだとおっしゃられた。私はどんな生き物にも手を合わせて拝むことにするぞ」と堅く誓って、出逢う生き物すべてに合掌し歩き続けました。
 その時、突然・・、
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 「おーい、みんな逃げろ!気のおかしくなった象がこちらに走って来るぞー!」と町の人が叫びました。
 その声を聞いて皆逃げ出しました。
・・が、この若いお坊さんだけは「気がおかしくなった象でも、やはり仏様の変身されたお姿に違いない。なぜ逃げる必要があろう」と思い、向かってくる象に向かい合掌し続けました。
 その爆走する象の後ろで、象使いが「早く逃げろ!踏み殺されるぞー!」と必死で叫びました。しかし、彼は逃げません。
そして「パァオーン!!」と・・、
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その象はお坊さんを跳ね飛ばして走り去って往きました。
 そして頭を打ち、気を失ったお坊さんは、やがて町の人に介抱されるとお師匠さまのお寺へと運ばれました。
 幸い怪我はたいした事ありませんでした。
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やがて、気がついたお坊さんに、先輩のお坊さんが尋ねました。
「君はどうして、逃げなかったのだね?」と。
 すると、若いお坊さんは「はい、すべての生き物は仏さまの化身だと教えて頂きましたので、狂った象も〔仏さま〕だと思って逃げなかったのでございます」と答えました。
 それを聞いてお師匠さまは言われました。
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「そうだ。お前の言う通りじゃ。象の仏さまが走って来られたのは本当だ。しかし、〔象の仏さま〕の後ろから、〔象使いの仏さま〕がお前に危険を知らせたであろう。すべてのものが仏さまだと考えるなら、なぜお前は、そこで〔象使いの仏さま〕の言葉を聴かなかったのか!お前はあの時〔象使いの仏さま〕の声に耳を傾けるべきだったのだよ」と・・。
 その言葉を聴いて、若いお坊さんは心の底から『その通りだ!』と思いました。
「私は狂った象の仏さまばかりに気をとられ、象使いの仏さまの声が聞こえてなかった。私の心は偏っていた。・・すべての生き物が仏さまなら、狂った象の仏さまの声も聞き、象使いの仏さまの声も聞くべきだったのだ」と思ったのです。
 それからというもの、このお坊さんは自分の見聞きするすべての仏さまの声を平等に聴いて、やがてりっぱなお坊様になられたという事です。 おしまい

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