仏教紙芝居 『二つの墓穴』 (仏教もの44) 〔本生経〕より
昔むかしのインドのお話。
或る村に、〔父〕と〔息子〕の二人で暮らす貧しい家が一件あった。
その息子は、年老いた父を一生懸命に働いて養っていた。
父はそんな息子を不憫に思い、知人に頼んで働き者の〔嫁〕を息子に世話してもらった。
その嫁は、最初は親切に舅(シュウト)の世話をし、夫にもよく仕えた。
しかし、やがて子供が生まれ、その子が七つになった時・・、
舅もだんだんと弱り、耳も遠くなり、物忘れもひどくなってきた。
すると、息子の父に対する言葉使いも荒くなり、それを見た嫁も同じ様に、舅に対して荒く当たりだし、その世話もいい加減な気持ちでするようになってきた。
その気持ちがさらに高じた頃、嫁の心に一匹の〔鬼〕が棲みついた。
そして鬼は或る恐ろしい計画を嫁にささやいた。それは、舅を墓場につれて行き、埋めてしまう計画であった・・。
或る晩のこと、嫁はその計画を夫に話した。
夫はびっくりして最初はためらった。・・が、やがて妻に説得され、父を墓場につれて行き埋める決意をしたのだった。
そんな父と母の話を密かに聞いていたのが、七つになる子供であった。「これは絶対にやめさせないと!」と子供は思い、舅を墓場につれて行くその日に、「僕も一緒に行く!」と言い張り、ついて行くことにした。
やがて〔老父〕と〔父〕とその〔子供〕は墓場に到着し、父は大きな穴を掘り始めた。
どれぐらい時間が経ったであろう。
やがて子供は、父に尋ねた。「父ちゃん、なぜそんな大きな穴を掘っているの?」と。
すると父は、「じいちゃんは、年寄りで、病気で、あんなに苦しんでいるだろう。だから、早く楽にしてやろうと〔穴〕を掘って埋めてやるつもりなんだよ」と答えた。
すると子供は「あっ、そうなんだ!」と言って自分もその横に〔穴〕を掘り始めた。
父は不思議そうな顔をして「お前は何をしているんだい?」と尋ねると、子供は「うん、僕もね、父ちゃんの真似をして、今から父ちゃんが年老いた時に埋める〔穴〕を掘ることにするの!」と言った。
その言葉に父は『ハッ!』とし、『自分はなんと恐ろしい事をやろうとしていたんだ!』と我に返った。
そして、涙を流し心から〔老父〕に詫びて、子供にお礼を言った。
それから大事に〔老父〕をつれて帰り、妻を叱りつけ、かつ自分も深く反省した。
それを見た〔鬼〕は居たたまれなくなって、妻の心から逃げ出した。こうして妻も我に返り、元の優しさを取り戻した。
その後、老父の介護は、みんなで仲良く助け合って行い、幸せに暮らしたという。
・・これは《おシャカ様》の〔前世〕が、賢い子供だった時のお話だと伝わっています。
昔から、〔介護〕の問題って国を問わずに、あったんですね~。
又、《おシャカ様》って〔前世〕でも、マセた(いやいや・・)智慧の深いお方だったのですね~。 めでたし、めでたし・・・。