住職のつぼやき[管理用]

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特養『甍(イラカ)』 《秋季彼岸・偲ぶ会》

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 昨日は、特養老人ホーム『甍』での《秋季彼岸法要・偲ぶ会》の日であった。
 (上の写真)は、皆で〔勤行〕した後、新たに亡くなられた方の『思い出話』を、故人の担当職員がお話している場面である。
 職員にとって、入居者の方とは〔下の世話・食事介助・入浴介助・又は遠足や買い物〕など、ずっと長くお付き合いされてきた間柄なので、親よりも絆が深くなるパターンが多い。
 その方が亡くなる・・・。
 だから、心の整理が皆、なかなか付けないのである。
 ・・が、この〔法要〕で、故人のエピソードなどを皆に(涙ながら)話す事によって、少しは《整理》がつける。
 又、故人の家族(遺族)さんも参加されるので、介護現場であったエピソードなど、その場ではじめて解ったり、皆が共感できたりするのだ。
 これが、ここの〔偲ぶ会〕の良いところである。

 今回この職員による『思い出話』で、僕が特に印象に残ったのは、ある認知症の男性のエピソードであった。
 この男性は、「ずっと自分の左肩に男の子が居てまんねん。何か飲ましたらなあかん!」と言って、いつもお茶や水を肩越しに撒いて職員を困らせていたらしい。
 そんな一件、オカルトチックな思い出話をこの職員はされ、「亡くなられた今も、その行動の意味がわからず心に残っているのです」と言った。
 ・・すると、その男性の息子さん(遺族)が、「父にはたくさんの弟たちが居まして、いつも弟を背中に背負いながら、遊んでいたと言っていました。・・だから、きっとそれは、認知症になった時も、弟に何か飲まさねばならないという記憶だけが蘇えり、取った行動だと思います」と発言された。
 それを聞き、職員が「それを聞いて、ようやく長い間のなぞが解けましたー」と涙ながらに答えられた。
 この会話は〔介護した者〕と〔その家族(遺族)〕をつないだ、とても貴重な心の交流の一瞬であったような気がする。
 今回も、驚いたり、悲しんだり、温かい気持ちになったりした、とても印象深い〔偲ぶ会〕であった。

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