住職のつぼやき[管理用]

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紙芝居:『祇園精舎のはじまり』~スダッタ長者とギータ王子~(後編)

 『祇園精舎(ギオンショウジャ)』の『祇園』とは、この「紙芝居」にも登場している《ギータ王子》〔漢訳されて《祇(ギ)》〕の《園(ソノ)森林・荘園》という意味である。
 つまり『祇園精舎』とは、「ギータ王子の荘園であった所に建てられた《お寺》」という意味である。
 それでは〔後編〕のはじまり、はじまりー。

 (スダッタ)「とほほっ、コーサラ国一の大金持ちだったこのわし〔スダッタ〕様が、今や一文無しか。腹もぺこぺこ・・。が、ものは考えようじゃ。金持ちの時は、財産が無くなりはしないかと毎日心配であったが、今はそんな心配をしなくても良い。そう思ったら、気が楽じゃ。さぁ、今日も頑張って働らき《金貨》を稼ぐぞ!」と、そんな独り言を言う〔スダッタ〕を、〔ギータ王子〕は、こっそり観察していた。
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 (ギータ王子)「あんな事を言ってるが、お金を見つけるときっと、食べ物を買いに行くに違いない!」と、〔ギータ王子〕は、腹ペコの〔スダッタ〕の前に、わざと《金貨》を落として、〔スダッタ〕を試した。
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 すると、なんと《金貨》を見つけた〔スダッタ〕は、急いで、〔ギータ王子〕の荘園に走って行き、又一枚《金貨》を敷き詰めた。
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 それを見た〔ギータ王子〕は「負けた!」と思い、〔スダッタ〕の前に飛び出し、手を握って言った。「あなたの勝ちだ!この土地はすべてあなたにお分けしましょう。・・でもなぜ、そこまでして、この土地が欲しいのですか?」と尋ねた。
 〔スダッタ〕が理由を話すと、「そうでしたか、そのような素晴らしいお話なら、この土地はただで差し上げましょう。そして、私にも、《お寺(精舎)》を建てるお手伝いをさせて下さい!」と言った。
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 そして、執念の〔スダッタ〕、若さ溢れる〔ギータ王子〕のコンビは、息がぴったり合い、みるみる内に、立派な大寺院『祇園精舎』は完成したのであった。
 そして、・・やがて、おシャカ様一行はやって来られ、ここで連日、コーサラ国の人々に尊いみ教えを説かれたという。
 
 最後におまけ・・・。
 この『祇園精舎』から名前を取り、町の名にしたのが、京都の〔祇園〕。
 これは、京都の〔八坂(ヤサカ)〕という所に祀られた《牛頭(ゴズ)天王》という疫病の守護神が、インドの『祇園精舎』の守護神であったという所から、・・この地に『祇園社』というお寺が建てられ、この『祇園社』というお寺の名前が、この町の名の由来になったという事です。
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 しかし、もし〔スダッタ長者〕が、今のこの町の艶っぽさを見られたら、きっと驚かれるでしょうね・・? おしまい
 

紙芝居:『祇園精舎のはじまり』~スダッタ長者とギータ王子~(前編)

「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり・・・」
 これは、有名な『平家物語』の一節である。
 この『祇園精舎(ギオンショウジャ)』とは何か?
 答えは、インドのおシャカ様の《お寺》の名前なのである。
 これは、その《お寺》の始まりのお話。
ファイル 167-1.jpg (仏教もの25)〔前編〕
 昔、インドのコーサラ国に、〔スダッタ〕という名の大金持ちの商人がいた。
 ある日、〔スダッタ〕は、商談の帰りに、隣国の兄の所へ寄った。
 が、兄は、おシャカ様の接待に忙しく〔スダッタ〕の相手どころではなかった。
 おシャカ様の存在を知らなかった〔スダッタ〕は、「この弟の私を、ほったらかしにする程、・・それ程、〔おシャカ様〕とはご立派なお方なのか?」と、次の日の朝、おシャカ様の滞在されている所へ向かった。
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 すると、偶然にも、おシャカ様は〔スダッタ〕の所へ歩いて来られた。
 そのおシャカ様の光輝くお姿を見た〔スダッタ〕は、「なんと、尊いお姿なのだろう!」とその場でしゃがみ込み、涙を流して合掌した。
 その姿を見ておシャカ様は、「そなたは、どちらのお方ですか?」と訪ねられ、〔スダッタ〕はそれに答えた。すると、おシャカ様は「おお、そなたはコーサラ国のお方ですか。私も一度、そなたの国に行ってみたいと思っているのです」と言われた。
 それを聞いて〔スダッタ〕は、「是非、おいで下さい!その時は、私めが、あなた様の《お寺》をお建てしてお待ち致しましょう」と言ってしまった。
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 それからというもの、〔スダッタ〕のお寺を作る為の場所探しの日々が始まった。
 そして、ついに〔スダッタ〕は良い場所が見つけたのだが、そこは、コーサラ国の〔ギータ王子〕の別荘地であった。
 〔スダッタ〕は〔ギータ王子〕に、何とかこの土地を売って欲しいと頼み込んだ。・・が、〔ギータ王子〕は首を縦に振らない。
 そして、その余りに執拗な〔スダッタ〕の願いに、根負けしてついに〔ギータ王子〕は、「この土地を《金貨》ですべて被い尽したら、分けてやる」と言った。
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その言葉の通り、なんと次の日から〔スダッタ〕は、自分の全財産を《金貨》に変えて、その土地に敷き詰め始めだした。
・・が、そう簡単に、そのような事は出来るわけがない。
 半分程、《金貨》を土地に敷き詰めただけで、全財産は無くなり、いつの間にか〔スダッタ〕は一文無しの男になってしまった。
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 (後編)へつづく・・・
 

 

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