《・・諸々(モロモロ)の悪しきことをせず、善い事を実行せよ。そして自(オノ)ずから、その意〔こころ〕を清めていくこと。これが諸仏の教えである・・『法句経』より》
(仏教もの37)
〔あらすじ〕
昔々の中国のお話・・。
杭州(コウシュウ)の奉望(シンポウ)山という所にひとりの変わったお坊さんが居た。彼の名は〔道林(ドウリン)〕という禅僧で、お寺に住まず、老いた松の上に(ゲゲゲの鬼太郎のように)住んで修行していた。
ある日、この〔道林和尚〕の元に〔白楽天(ハクラクテン)〕という高名な政治家であり詩人でもある男が訪ねて来た。
白楽天は木の上の和尚を見上げて〔禅問答〕を吹っかけた。
「和尚!『仏様の教え』とは一言であらわすと何でありましょうか?」・・と白楽天は尋ねた。
すると和尚は「《悪いことをするな、善いことをせよ》である」と答えた。
白楽天は「平凡すぎる・・」とガッカリした。彼はもっと哲学的な答えを求めていたからであった。
そこで、「和尚!そんなことぐらい、三才の子供でも知っていますよ」と続けて叫んだ。
すると和尚はすかさず・・、
「しかしなぁ、それを実行するのは八十才の長老でも難しいぞ!」と答えた。
白楽天は「負けた!」と思った。「・・確かにその通りだ。善い事をしようと頭ではわかっていても、いざ行動を起こすとなるとこれ程難しいことはない。逆に悪いことはダメだと思っていても《わかっちゃいるけど、やめられない!(それ、スイスイスーダララッタ・・〔失敬〕)》・・年齢など関係のないことだ!和尚のおっしゃる通りだ。大事な教えを有難うございます」・・。
こうして白楽天は道林和尚にお礼を言って帰っていったという。おしまい
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