住職のつぼやき[管理用]

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「まぁ、一杯飲んでいきなはれ!」

 僕の毎日の仕事は〔月参り〕といって、檀家さんのお家の《ご仏壇》に、読経に行くことである。
 読経が終わると、お茶やお饅頭を出して頂き、色々なお話をして帰る。
 それは《仏事》に関係のない話題も多い。
 たとえば、子供さん・お孫さんの学校での話や、お嫁さん、息子さんの仕事の悩み、又ご近所の事、病気の事、ペットの話など、エトセトラ、エトセトラである・・。
 この前も「住職さんはお経を上げてる時間より、終わってお話している時間の方が長いでんな~」とそこのご主人に笑われた。
 僕はこれは《褒め言葉》だと受け取っている。日頃から色んな会話をしておかないと〔いざっ〕という時、人間関係がスムーズに運ばないと思うし、・・それとは別に僕は人とおしゃべりするのが好きなのである。
 それで・・本題にはいる。〔たいした本題ではないが・・(笑い)〕
 うちの檀家さんに、奥様を先に亡くされた〔ご主人〕が居られて、この方は子供さんも居なくて、いつも一人でテレビを見ておられる。
 僕が読経を終えたら、たいてい「住職さん、こっちに来て一杯飲みなはれ!」と言われ、居間の方に行くとそこには「焼酎のお湯割り」の入ったコップが二つ並べてある。
 たいてい申し訳ないが、僕は〔お酒〕は断ることにしている。
 だってまだ他の檀家さんへのお参りがあるし、車で行かなければならない所もあるからだ。
 が、これはこのご主人の僕への〔心を込めた接待(布施)〕なのである。それは、いつもの態度で判る。
 だから、十回に一回はこの接待(布施)を受けることにしている。〔その日のスケジュールは全てキャンセルすることになるが、それは仕方がない事と思っている・・〕
 一緒に飲んでいたら、亡くされた奥さんの話や、一人の夜の長さ・寂しさの話など、色々と素面ではされないようなお話をして下さり、学ばせてもらうことも多い。
 お酒のつまみは(お断りしても)、ゴボてんや炊き込みご飯(ご自分で炊かれるのだ)などを出して下さり、お腹一杯になって自転車を押して「あー、ええっキモッちや~」とお寺に帰る。
 毎回、この接待を受けるわけにはいかないが、ここのご主人がいつもと違った《特別孤独な雰囲気のオーラ》を出しておられる時は、それを見逃さずに、一杯付き合うことにしている。
 僕はこれも《仏道修行》だと思っているのである。


 

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