またもや世界は一瞬、眩しいほどに輝きました。
そして気がつくと、又、元の世界に戻っていました。
その時です。後ろから幾人かの人の声が聞こえて来ました。
「お~い、長一さーん」、「お前さーん」、「お父ちゃ~ん」、「兄さーん」と。
長一が振り返ると、そこには、
妻と子、そして弟、長屋の住人の方たちが大勢で立っていました。
「お前さん、探しましたよ。長屋の方たちがあなたの名前の書いた財布を拾ったと、家まで届けて下さったのよ。」と妻が言いました。
長一は「・・お前っ、私が解るのかい?」と言うと、
妻は「何、言ってるの?当たり前でしょ。皆さん、心配してあなたが自殺でもしないかと、町中探し回って下さったのよ。」と言いました。
その時、弟が前に出て来て「兄さん、心配したよ。」と言うと、
長一は「お前、生きてるのか?!」と言い返しました。
弟は「当たり前だろう。それはこっちのセリフだよ。長屋の女将さんたちは、もう心配してあそこの路地裏のお地蔵さんをずっと拝んで下さっていたんだよ。」と言いました。
長一は「あぁ・・、そうなのか。・・お地蔵さまを。あっありがとうこざいます。皆さん!」と言うと、
子供たちが「お父ちゃーん!!」と言って長一に飛びつきました。
(長一)「あぁっ、生きてることは素晴らしいことなんだ。
・・ああっ、素晴らしき哉、人生!」と、長一は子供たちを抱きかかえ叫びました。
・・・・。
(一人前地蔵)「・・という訳で、今、私の身体は眩しいほどに〔後光〕が輝いておるのでございます。
もう、半人前ではありません。
一人前地蔵です。
えっ?、その後〔長一〕一家はどうなったかって?
はい、今では長一も借金を返して、皆で幸せに暮らしておりますよ。
何っ?、お前が又魔法を掛けたのかって?
いいえ、人の命の大切や、その絆に気づいた者は、自然と《幸せの光》が入って来るものなのでございますよ。
皆さんも、そこんとこ、よ~く覚えておいてくださいよ。
それじゃ、このへんで失礼しましょうか。おさらばです。・・さようなら。」
めでたし、めでたし。 おしまい
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