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紙芝居:「ある抗議書」 その1

 作家「菊池寛」氏の作品に、『恩讐の彼方に』という名作がある。 
 これは僕の大好きな作品で、紙芝居〔作品名87〕にもした。
 しかし、この作品には『裏・恩讐の彼方に』と、(僕が勝手に名づけている)もう一つの同じテーマの物語がある。
 『恩讐の彼方に』は、教科書などに掲載されたりする名作であるが、今から紹介するこの「紙芝居」は、(名作ながら)まず教科書には載らない。
 この作品、菊池寛が『恩讐の彼方に』と、ほぼ同時期に書いたというのも、驚きを隠せない。
・・これは、ある意味、宗教界にも問題を投げかける問題作であると、僕は思っている。
(注: 実際の原作とは違い、多少、表現を変えてある箇所がありますのでご容赦下さい。)
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 (秘書官)「司法大臣閣下、封書が届いております。・・今、お読みになられますか?」
 秘書官はそう言って、一通の分厚い封書を差し出した。
 (司法大臣)「うむ、・・今、読む。」そう答え、司法大臣は、その封書を開け読み出した。 
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 「司法大臣閣下。
 何の面識もない無名の私からの突然の書状のご無礼、どうかお許し下さい。
 私は、大正三年五月に、千葉県千葉市で、凶悪無残な強盗に、姉夫婦を殺されました、故・角野(すみの)一郎の弟でございます。
 閣下、今でも、私はあの事件を思い出す度に、心と身体に戦慄が走るのでございます。
 私の姉ほど、哀れに死んで逝った者を知りません。
 今日は、あの事件について、今一度、述べたき事がございまして、この手紙を書きました。
 閣下、あの事件を今一度、思い出して頂けませんか。
 そう、あれは忘れもしません。大正三年五月○日の夜のことでした。
 ・・・ドンドンッ、ドンドンッ!
 私の家の戸を、真夜中に乱打するものがあり、驚いて私が戸を開けると・・、」 つづく
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