前回からの続き・・
平成8年2月22日の記録
・・O先生に連れられて、N君(21才)に会うべく、僕は初めてT病院のY病棟に入った。
大きなエレベーターで二階に上がり、六人部屋に入る。
初めてN君に出会った時の印象は強烈であった。
頭は普通の若者と同じぐらいの大きさなのだが、体は痩せ細り、腕も足も骨と皮だけのようであった。
それに今は、口からモノを食べることができなくなっていて、胃に穴を開けて栄養剤を入れて生命を保っているということで、薄緑の液体の入ったガラス瓶からチューブが出ていて、体とつながっていた。
この時、彼は髪の毛をわりと伸ばし、薄ヒゲで目だけがキラキラ輝いていた。
O先生が僕を紹介してくださり、N君と僕のしどろもどろの会話が始まった。
まず、受けた印象は、彼はとても頭が良くて、なんでも知っているという事であった。
たとえば、僕に「なぜ、○○寺はよく内紛が起こるのでしょうねぇ。・・西本願寺はどうなのですか?」と、聞いて来た。
彼はテレビや雑誌などから、社会情勢・政治経済・スポーツなどの情報を知っていたのだ。
どう答えて良いか戸惑ったが、僕の知ってる範囲で答えた。
こうして少し世間話などをして時間を過ごした。
彼は繊細で、誠実な性格のように思えた。
「これは気が合うかもしれん」と思った僕は、「又来ても良いですか?」と尋ねたら、OKが出たので、ほっとして今日の所は帰ることにした。
・・こうして、僕と筋ジストロフィー青年N君との三年間に渡る交流が始まったのだ。
つづく
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