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紙芝居:『本当の香り』 ~ニーチの話~〔前編〕

『本当の香り』~ニーチの話~ 「大荘厳経論」より
ファイル 215-1.jpg (仏教もの14)
昔むかし、インドの国に〔ニーチ〕という《お便所の汲み取り》を仕事とする若者がおりました。
 〔ニーチ〕はまじめな青年で、毎日一生懸命に働いておりました。
 それで、身に着けている布ばかりでなく、身体にまで臭いが染み付いており、仕事中はもちろん、そうでない時でも人々は〔ニーチ〕を避けて通りました。
 〔ニーチ〕は寂しく思いました。友達が欲しいと思いました。
「そうだ!臭いの染み込んでない服を作れば良いんだ!」と・・、
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〔ニーチ〕は、こまめに集めた〔布きれ〕を綴り合わせて服を作りました。
「これで友達ができるかもしれないぞ」と、ひそかに胸を躍らせて町に向かいました。
 ・・が、人々は〔ニーチ〕を見ただけで、顔をしかめました。
 いつも程、臭いがしない事に誰も気がつきません。
 誰もが『ニーチは臭いに決まってる』と思い込んでいるようでした。
 〔ニーチ〕はいっそう寂しくなりました。
「僕が臭いのは誰のせいだ!誰のお蔭でみんなお便所で〔用〕を足せるんだ!」と・・、
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〔ニーチ〕は、いつも《肥》を捨てに行く町はずれの広い原っぱを大声で喚きながら走りました。
 それから、草原に《大》の字になって空を見つめました。
 すると、どこからか声がしました。
「どうしたんだい、今日は機嫌が悪そうだね・・」
ファイル 215-4.jpg
〔ニーチ〕はびっくりして起き上がりました。
 そこには、杖をついて痩せた老人が立っていました。この老人はどうやら、目が悪そうでした。
 「ワシは、ここでずっと鳥や動物達と同じように暮らしている。
お前さんはいつもここに、重い《肥》を捨てに来てるんだろう。・・ご苦労な仕事だ。ワシはお前さんが羨ましい」
 それを聞いて〔ニーチ〕はびっくりし、「お爺さん、どうして僕の仕事が羨ましいのですか?」と聞くと・・、
「それは、お前さんが《人の役に立つ仕事》をしているからだよ」
〔ニーチ〕は驚き、『僕の事を、そんな風に見てくれている人がいたんだ・・』と、それだけで彼の心はすっかり晴れました。
 この老人、「今日はいつものような臭いがしないねぇ・・。どうかしたのかい?」と続けて尋ねました。
〔ニーチ〕は「いいえ、別に・・。はい、とても良い事があったんです。お爺さん、有難う!」とお礼を言って別れました。
 
 それから〔ニーチ〕は、又、仕事に精を出しました。
 すれ違う人が顔を背けても、ちっとも気にならなくなりました。
 そんなある日、この町に〔お釈迦さま〕一行がやって来られました。 
 〔後半〕へ続く・・