(はじめに)
・・一つのことに、心が執(とら)われて、そこから離れない事を執着(しゅうちゃく)という。
昔々のお話。
二人の修行僧が旅をしておりました。
歳を取った兄弟子の僧侶は、若い弟弟子の僧侶にいつもこう言っていました。
「仏教の修行とは厳しいものじゃ。・・心が乱れるので、若い女性には触れてはいけないぞ。」と、いつも言っておりました。
「はい、わかりました。」と若い僧侶は、この兄弟子の言葉をしっかり守っておりました。
そんなある日。
或るところで、一人の若い娘がしゃがみ込んで泣いておりました。
「どうしたのかな?娘さん」と、兄弟子は尋ねました。
すると、
「あっ⁈はい、お坊様。・・いつもここは、川が出来ていないのです。・・が、昨日の大雨で、ここが川になってしまいました。
私は大事な用があって、急いで向こう岸まで行きたいのですが、どうしても怖くて行けません。・・どうしたものか⁈と思って、それで泣いていたのです。」と、娘は言いました。
「ああっ、そんなことで泣いていたのですか。」と、兄弟子は答えたと思うと・・。
ひょいっと、娘を[お姫さま抱っこ]をしたかと思うと、バシャバシャと川を渡ってしまいました。 つづく
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