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紙芝居:『月の神様になったうさぎ』

 紙芝居:『月の神様になったうさぎ』(仏教もの2)

 昔むかしの大昔、神様がこの世に色々な《生き物》をお作りになったばかりの頃のお話・・。
 地上では《生き物》たちが、みんな仲良く暮らしていました。
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 そんな姿を《帝釈天(タイシャクテン)》という神様は、最初は微笑ましく眺めておられたのですが、ある時、『フト』脳裏に疑問が走りました。
 ・・というのは、『彼等は皆一見、仲良さそうに見えておるが、実の処、意地悪な〔心〕を皆隠し持っておるのではないか?』という疑問でした。
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 それで、この神様は、哀れなおじいさんの姿に変装して、地上に降りてこられ、皆に「私は腹ペコで、もう何日も何も食べておりません。どうか、食べるものをくだされ~」と訴えました。
 優しい動物達は、皆で会議をして、このおじいさんの為に何か食べ物を見つけてこようと相談しました。
 やがて、クマやキツネ、サル、鳥、みんなそれぞれにおじいさんの為に〔木の実〕や〔果物〕など食べ物を見つけて、持って帰って来ました。
 ・・が、一匹の〔うさぎ〕だけが、その日、何も見つけることができなかったのです。
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 それで、この〔うさぎ〕は、何か思いつめたあげく、突然、おじいさんに「火をおこして!」と頼み込みました。
 おじいさんが、訳がわからず火をおこすや否や、〔うさぎ〕は「おじいさん、ゴメンね。・・僕はあなたの為に何も食べ物を見つける事ができませんでした。だからお詫びに僕を食べて下さい!」と・・、
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あっと言う間に、火の中に飛び込んでしまいました。

 動物たちもおじいさんも、その一瞬の事にどうすることもできず、すぐに火は消し止めましたが、間に合いませんでした。
 やがて、皆は黒焦げになったうさぎの遺体を囲んで、ワンワン泣きました。
 中でも一番後悔したのが、おじいさんでした。
 おじいさんの姿は、いつの間にか元の〔帝釈天〕の神様の姿に戻り、皆に言いました。「私が、皆の心を試そうとしたが為に、尊い〔うさぎ〕の命を奪ってしまった・・・。私は今から、お詫びの気持ちとして、この〔うさぎ〕を〔月〕につれて行って蘇らせる。そして〔月〕の神様にする。お前たち、もし喧嘩をしそうになったなら、自らの命を捨てて、他のものを助けようとしたこの尊い〔うさぎ〕のことを思い出してやっておくれ」と言い、〔うさぎ〕を抱いて空高く飛び立ちました。

 こうして、〔月〕に〔うさぎ〕が棲むようになったという事です。 おしまい。
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コメント一覧

らむね 2008年10月02日(木)19時12分 編集・削除

こんばんは。たまたま2-3日前、文庫の今昔物語集でこの話を読んだところでした。話自体面白いですけれど、やっぱり絵があるとさらに印象に残りますね。これからもいろんな作品が拝見できることを楽しみにしています。

紙芝居屋亭 亭主 2008年10月03日(金)09時09分 編集・削除

 コメントありがとうございます。
『今昔物語』を読まれたとか、タイムリーでした!
 実は、このお話は『ジャータカ(本生経)』というお経が元でして、この〔うさぎ〕はおシャカ様の前世の姿のひとつであったと書かれてあります。
 そして、さらにこの話には、オチがありまして、この〔うさぎ〕の姿は、最初はハッキリと見えていたのだそうですが、おシャカ様に生まれ変わったので、今ではその〔影〕しか見えないのだ。とあります。
 いったいそんな〔オチ〕、誰が考えたのでしょうか?
 面白いですよね・・。

らむね 2008年10月03日(金)14時05分 編集・削除

お返事有難うございます。
「ジャータカ」はお経だったんですね。
岩波文庫の今昔物語集ではこのお話の出典は「ジャータカ・316(ササ・ジャータカ)」と書いてありましたが、私は「ジャータカって何?」状態でした。お経と言うと難解で近寄り難い雰囲気ですがこういう面白い説話が他にもたくさんあるようですね。

再び、紙芝居屋亭 亭主 2008年10月03日(金)15時11分 編集・削除

らむね様
 ・・この際ですので、もうちょっと『ジャータカ』について、お話させていただきますね。
 堅苦しい『仏教専門書』には次のように書かれてあります。
 「ブッタ(おシャカ様)が、その偉大な神通力によって自らの前世を思い起こし、弟子に語って聞かせたと伝えられているのが『本生譚(ホンジョウタン)』=《ジャータカ》というお経である。
 ブッタがはたして、『ジャータカ』に述べられているような形で、自らの《前世》を語ったかどうかは疑問であるが、『当時、世にあった童話風の物語を利用し、自己に関する過去の因縁を明らかにし、すべて偶然ではないという理由を巧みに説示されたこと』はあったであろう。(木村泰賢師談)」と、書かれてあります。
 そしてこの『ジャータカ』は、やがて世界に広がり、『アラビアン・ナイト』や『イソップ物語』・『グリム童話』、そして日本の『今昔物語集』などにパクられて、いやいや影響を与えていったという事です。以上 
 

らむね 2008年10月04日(土)07時47分 編集・削除

「ジャータカ」のこと詳しく教えて頂きありがとうございました。
洋の東西の昔話で類似するお話がたくさんあることに興味を持って
いましたが、そのルーツの一つが「ジャータカ」なんですね。

市内の図書館が「ジャータカ・マーラー」という本を所蔵して
いたので早速予約を入れました。

今は「往生要集」を読み始めたところです。難解で、読んだらヘトヘトになった
ダンテの「神曲」との類似が面白いです。

紙芝居屋亭 亭主 2008年10月05日(日)12時05分 編集・削除

 らむね様
 私も「往生要集」はお気に入りの書でして、無謀ですが、『紙芝居』化を試みてみました。
 第1部は「往生要集」を書かれた《源信》様の生涯を描いた『源信さまとお母さん』(マザコン僧侶〔?〕「源信さま」を描いたまじめな〔?〕作品)。
 そして第2部に『源信さまと地獄・極楽のはなし「往生要集」』と題して、《地獄八景と極楽十楽》の様子を『源信』さまが旅をすると形でマニアックに作ってみました。・・・その内、このブログに載せたいと思っていますので、お楽しみに!

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